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さよならは約束だらうか

もう一度会うときまでさようなら

ZARDという付箋①レストランの立ち上げ。

ZARDの曲が突然カーラヂオから流れてきた。

ラヂオの良いところは予想だにしない曲が不意に流れてくるところだろう。何故なら僕の中でZARDとは、自ら聴くことのないアーティストのひとつなのだから。車を運転しながら僕は、20年前の今日の日の激動を想って苦笑していた。

 

30歳になったばかりの僕は、レストランの立ち上げメンバーとしてリゾートホテルから出向することになり、2200人収容できる大ホールを併設した財団の施設へ向かっていた。

いま考えても地獄のような会社である。「これで何とかしなさい」と、当時の社長に現金50万円が入った封筒だけ渡されたのだ。まるで計画がないのである。居抜き物件なので、前の経営者が置いていった食器などはあるけれど、それを見てできるものを考えてやれということなのである。

とりあえず50万円のうち半分使って食材を仕入れ、営業を始めてみた。

そこは大きなホール(2200人収容)と小ホール(300人程度収容)があり、その他会議室などが7Fまであるナンチャラ会館という施設で、会議室利用者に出す仕出し弁当やコーヒーなど作りながらレストランを運営するという基本スタイル。とにかく仕入れた食材を上手に使いながら日々の売上をなんとか現金で稼がなくてはならないのだ。「てるみくらぶ」も真っ青の自転車操業である。

実際、県庁の近くということもあって県の職員に多く利用されるのだがみんな「売掛」で清算をしようとする。正直「殺す気か!」なのである。こっちは手持ちの現金と日々の売上が無ければ食材すら仕入れられないのである(始めたばかりで信用がまだないので業者に対して現金でしか仕入れられない)今日の売上で明日の支払いをするのだ。本社からは一切の援助はない。プラスになった売上を入金するだけで、なんとか上手いことやれのスタイルを断固として貫いてくるのだ。ぞっとするほど立派である。

 

 

ところがどうして営業開始してから3ヶ月目には黒字化できたのである。自分は神かと思ったけれど、もともと企業の会議室利用やレセプションなどが多く、仕出し弁当の注文(1500円の弁当50個くれとかザラにある)コーヒーを会議室へ提供する出前注文80人分(1杯400円という高額設定にも関わらず馬鹿みたいに注文する)とか毎日あるのだ。ウハウハである。

レストラン自体には客がさっぱり来ないのだが、出前注文だけやってればロスもほとんどなく儲かって仕方がないのだ。

後でわかったのだが、財団の職員がうちの店を優先して斡旋してくれることで他に頼めない状況を作り出していてくれたらしい。そんなカラクリがなきゃ無理だよね。

 

 

 

そんなこんなで初めての春がもうそこまで近づいてきた3月の初め、僕は財団から1本の内線を受けることになる。それは日産という大企業からの桁外れな注文で、当時僕と、もうひとりの料理人1名、アルバイト1名ではとても太刀打ちできない代物なのであった。

 

「4月にこの大ホールを日産で使うのですが、その日に1000円のお弁当をお願いしたいんですよ。。。えぇ、2200個です」

 

 

 

 

 

【続く②組長登場と呪詛の響き】